「前略」はいつ使う?「拝啓」との違い

マナー・付き合い
ソボチエ編集部

「前略(ぜんりゃく)」は、手紙の最初に書く季節の挨拶や、相手の近況を尋ねる言葉などを省いて、すぐに用件を伝えたいときに使う言葉です。親しい相手への短い連絡などに向いており、最後は「草々(そうそう)」で結ぶのが一般的です。

一方、「拝啓(はいけい)」は、一般的な改まった手紙の書き始めに使います。通常は季節の挨拶などを続け、最後を「敬具(けいぐ)」で結びます。どちらを使うかは、相手との関係や手紙の目的で判断しましょう。

「前略」は前文を省くという意味

手紙は一般に、最初の挨拶などを述べる「前文」、用件を書く「主文」、結びの挨拶をする「末文」、日付や差出人の名前などを記す「後付け」で構成されます。

「前略」は、このうち前文にあたる挨拶を省くことを知らせる頭語(とうご)です。頭語とは、手紙の書き始めに置く決まった挨拶の言葉をいいます。「前略」と書いたら、「春暖の候」「お変わりなくお過ごしですか」といった季節や安否の挨拶を続けず、用件に進みます。

例えば、知り合いに予定の変更を知らせるなら、「前略 来週の集まりについて、開始時間が変わりました」と書き始めます。長い挨拶を省き、伝えたい内容をすぐに読んでもらうための書き方です。

「拝啓」とは何が違う?

「前略」も「拝啓」も、手紙の冒頭に置く頭語ですが、使い方が違います。

比べる点 前略 拝啓
主な意味 前文の挨拶を省きます へりくだって申し上げます
書き出しの後 季節の挨拶などを省いて用件へ進みます 季節の挨拶や相手を気遣う言葉を続けるのが基本です
使いやすい場面 親しい相手への短い連絡など 一般的な手紙、改まった挨拶やお礼など
結びの言葉 草々 敬具

「草々」や「敬具」は、手紙の終わりに添える結語(けつご)です。日本郵便では、頭語と結語は対応する組み合わせで使うと案内しています。「前略」で始めたら「草々」、「拝啓」で始めたら「敬具」を選ぶと分かりやすくなります。

「前略」を使いやすい場面

親しい人に短く用件を知らせるとき

友人や親戚など、日頃から付き合いのある人に予定変更や連絡事項を伝える場合は、「前略」を使いやすい場面です。すでに事情を知っている相手なら、長い挨拶を省いても話が伝わりやすいでしょう。

ただし、家族や親しい友人への普段の手紙は、頭語そのものを書かずに「この前はありがとう」「今度の集まりですが」などと始めても構いません。短い手紙に必ず「前略」を入れる必要はありません。

急ぎの連絡で、本題を先に伝えたいとき

予定の変更や早めに確認してほしいことがあるときも、前文を省いた書き方が役立ちます。ただし、急ぎの手紙に使う頭語には「急啓(きゅうけい)」もあります。急用だからといって、相手を問わず「前略」を使うわけではありません。

お詫びやお見舞いで挨拶を省きたいとき

お詫び状やお見舞いの手紙では、季節の挨拶を省き、謝罪や気遣いを先に伝えることがあります。ミドリの手紙マナー資料でも、「前略」は前文を省く手紙として、お詫び・お見舞いの場面に挙げられています。

ただし、重大なお詫びや相手の状況が深刻なときは、「前略」と書くこと自体よりも、謝罪やお見舞いの言葉をすぐに伝えることが大切です。頭語を置かずに「このたびは誠に申し訳ございません」「ご入院されたと伺い、心配しております」などと書き始める方法もあります。

目上の方や正式な手紙では避けたほうがよい?

「前略」は前文を省く略式の書き方です。恩師や上司、取引先などに改まって送る手紙では、挨拶を省くことが失礼と受け取られる場合があります。一般的には「拝啓・敬具」を使うほうが無難です。より丁寧な表現が必要な場合は「謹啓・謹白」などを選びます。

初めて手紙を送る相手への挨拶状や、正式なお礼状・お祝い状も、前文を整えて書くのが基本です。急ぐ用件であっても、形式を省いてよい関係かどうかを考えましょう。

一方、お詫びやお見舞いなど、挨拶よりも用件を優先する手紙には例外があります。相手との関係だけでなく、知らせる内容に合わせて書き方を選びます。

「前略・草々」の書き方と文例

「前略」を使う場合は、最初に「前略」を置き、続けて用件を書きます。内容を伝えたら、必要に応じて短い結びの言葉を添え、最後に「草々」と書きます。改まった手紙なら、その後に日付・差出人・宛名などを記します。

親しい知人へ短く連絡するとき

前略 先日お話ししていた資料を、本日郵送しました。お手元に届きましたら、ご確認ください。

まずはお知らせまで。

草々

この文例では、季節の挨拶を入れず、すぐに連絡事項を書いています。

「拝啓」を使って丁寧に伝えるとき

拝啓 日ごとに秋が深まってまいりましたが、お変わりなくお過ごしでしょうか。

先日お話ししていた資料を、本日郵送いたしました。お手元に届きましたら、ご確認いただけますと幸いです。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

敬具

同じ連絡でも、改まった手紙では季節や相手を気遣う挨拶を添えてから用件に入ります。季節の言葉は、実際に出す時期に合わせて変えましょう。

「前略」を使うときの確認ポイント

  • 「前略」のあとに季節の挨拶や安否を尋ねる挨拶を重ねない。
  • 手紙の結びは「敬具」ではなく、一般的には「草々」とする。
  • 目上の方や初めての相手への正式な手紙では、略式の書き方でよいか考える。

迷った場合は、親しい相手への簡単な連絡なら「前略」、改まった手紙なら「拝啓」を目安にしてください。特にお詫びやお見舞いでは、形式よりも相手に伝えるべき言葉を優先しましょう。

参考資料