箸渡しはなぜしてはいけない?避けたい箸の使い方
箸でつまんだ食べ物を、別の人の箸へ直接渡す「箸渡し(はしわたし)」は、食事中には避けたい箸の使い方です。火葬後に遺骨を箸で拾う「骨上げ」を連想させるため、和食では不作法とされています。
食べ物を人に渡したいときは、相手の箸へ直接つなぐのではなく、取り箸などを使って相手の皿に置くようにしましょう。ほかにも、箸をご飯に立てる、箸で食器を引き寄せるといった避けたい使い方があります。
箸渡しとは?どんな動きがいけないの?
例えば、家族が箸でつまんだ唐揚げを「これを食べてみて」と差し出し、別の人が自分の箸でその唐揚げを受け取ると、箸渡しになります。料理を一度皿に置かず、箸から箸へ食べ物を受け渡すのが特徴です。
箸渡しは「合わせ箸」「拾い箸」とも呼ばれ、食事の作法で避けられてきた「嫌い箸(きらいばし)」の一つです。嫌い箸とは、一緒に食べる人に失礼と受け取られたり、縁起がよくないとされたりする箸の使い方を指します。
また、一皿の料理を二人がそれぞれの箸で同時につまむ動きは「二人箸」と呼ばれ、これも避けたい使い方です。箸渡しとは別の呼び名ですが、同じ食べ物を箸同士で挟まないようにしましょう。
箸渡しを避ける理由は、葬儀の「骨上げ」にある
日本の葬儀では、火葬後の遺骨を箸で拾い、骨壺に納める「骨上げ(骨あげ)」という作法があります。葬祭業界団体の説明によると、地域によっては二人一組で一つの骨を箸で挟み、骨壺に入れる方法が行われます。
箸の専門メーカーは、遺骨を箸から箸へ渡して納める作法も紹介しています。こうした葬儀の所作に似ていることから、日常の食事では箸から箸への受け渡しをしないというマナーにつながっています。
骨上げの方法は地域や宗派によって異なり、全国どこでも同じ動きをするわけではありません。箸渡しを避けるのは、食事と弔いの場を区別し、同席する人の気持ちに配慮するための習慣です。
食べ物を相手に渡したいときはどうする?
自分の箸でつまんだ料理を、そのまま相手の箸で受け取ってもらうのではなく、いったん皿に置きます。取り分ける場面では、次の手順を目安にすると分かりやすくなります。
- 相手に食べたいかを確認します。
- 取り箸や共用のトングがあれば、それで料理をつまみます。
- 相手の取り皿に料理を置きます。
- 相手には、自分の箸で皿から取ってもらいます。
例えば大皿の煮物を分けるなら、取り箸で小皿に盛って渡せば、箸渡しになりません。取り箸がない場合は、店員に用意してもらえるか尋ねるとよいでしょう。
箸渡しだと知らずに誰かが料理を差し出してくれたときも、相手を強く注意する必要はありません。「お皿に置いてもらえる?」と伝えれば、自然に受け取れます。
「箸渡し」と「渡し箸」は違う
名前がよく似ていますが、二つは別の行為です。
- 箸渡し(はしわたし):箸でつまんだ食べ物を、別の人の箸へ直接渡すこと。
- 渡し箸(わたしばし):食事の途中で、箸を茶碗や皿の上に橋のように横たえること。
農林水産省は「渡し箸」も嫌い箸の一つとして紹介しています。食事中に箸を休めるときは、器の上ではなく、用意された箸置きに戻しましょう。
ほかにも覚えておきたい、避けたい箸の使い方
箸渡し以外にも、よく知られている嫌い箸があります。動きと、その代わりにできることを一緒に覚えると役立ちます。
- 立て箸・仏箸:ご飯に箸を突き立てること。仏式の葬儀で枕元に供えるご飯を連想させます。箸を置くときは箸置きを使います。
- 刺し箸:箸を料理に突き刺して取ること。つかみにくい料理は、無理に刺さず、食べやすい大きさに分けてから箸で挟みます。
- 迷い箸:どれを食べようか迷いながら、料理の上で箸をあちこち動かすこと。取る料理を決めてから箸を伸ばします。
- 探り箸:器の中を箸でかき回して、好きな具を探すこと。料理の盛り付けを崩さず、手前から取ります。
- 寄せ箸:箸で器を引っかけ、手元へ動かすこと。器が遠いときは箸を置き、手で移動させます。
- 指し箸:箸の先で人や物を指すこと。何かを示すなら、箸を置いてから手で示しましょう。
- ねぶり箸:箸の先を口でなめること。箸そのものをなめず、食べ物を口に運ぶために使います。
どれも細かな形だけを覚えるための決まりではありません。周囲の人が気持ちよく食事できるように、料理や食器を丁寧に扱うことが基本です。