柊鰯を飾るのはなぜ?節分の魔除けの意味と飾り方

季節・年中行事
ソボチエ編集部

柊鰯(ひいらぎいわし)を節分に飾るのは、鬼や災いが家に入らないように願うためです。とげのあるヒイラギの枝に焼いたイワシの頭を刺し、玄関や門口に飾ります。鬼がヒイラギのとげやイワシを焼いたときのにおいを嫌う、という言い伝えから生まれた魔除けの飾りです。

柊のとげと焼いたイワシのにおいで鬼を遠ざける

節分には、豆をまいて「鬼は外、福は内」と唱える習わしがあります。昔の人々は、季節の変わり目に病気や災いをもたらす邪気が入り込みやすいと考えていました。柊鰯は、家の外から入ってくる鬼を防ぐための飾りです。

魔除けの意味は、ヒイラギとイワシのそれぞれの特徴に結び付いています。

  • ヒイラギの葉:葉のふちに鋭いとげがあり、鬼が近寄ると目に刺さって逃げてしまうと考えられてきました。
  • 焼いたイワシの頭:焼いたときの強いにおいや煙を鬼が嫌がり、家に近づかなくなるといわれています。

長野県岡谷市も、イワシの煙やにおいと、ヒイラギの葉のとげを鬼が嫌うことから、柊鰯を魔除けとして飾ると説明しています。もちろん、鬼を追い払う効果が実証されたということではなく、一年の無事を願う伝統的な縁起の考え方です。

柊鰯は玄関や門口のどこに飾る?

昔ながらの飾り場所は、玄関の外側や門口など、人が出入りする場所です。家の入り口を守るという意味から、戸口の近くに挿したり、ひもなどで吊るしたりします。

国際日本文化研究センターの民俗資料には、1915年の大阪府で、柊とイワシの頭を門の入り口や裏口の柱に挿した例が記録されています。香川県や三重県にも、戸口に挿す風習が伝えられています。

今の住まいなら、玄関の脇など、通る人の手や顔に枝のとげが触れない場所を選びましょう。壁やドアを傷つけないよう、ひもで固定するなど安全な飾り方にすると安心です。集合住宅では共用部分のルールにも従ってください。

柊鰯の作り方は?用意するものと手順

用意するものは、葉の付いたヒイラギの小枝と、焼いたイワシの頭です。飾るためのひもなども、必要に応じて使います。茨城県の村松山虚空蔵堂は、イワシを丸ごと焼いてから頭を外す方法と、頭だけを焼く方法の両方を紹介しています。

  1. イワシを焼き、頭の部分を用意します。焼いた直後は熱いので、十分に冷ましてから扱います。
  2. とげに気を付けながら、葉が付いたヒイラギの枝先をイワシの頭に刺します。ぐらつかないように、ゆっくり作業します。
  3. 玄関や門口の安全な場所に、落ちないよう固定して飾ります。

イワシの身の部分は料理に使えます。ヒイラギを選ぶときは、クリスマスの飾りに使う赤い実の付いた「セイヨウヒイラギ」と、日本のヒイラギは別の植物だという点にも注意しましょう。同志社女子大学の資料によると、日本のヒイラギはモクセイ科で、セイヨウヒイラギはモチノキ科です。

いつから飾って、いつまでに外す?

柊鰯を飾る時期に、全国共通の決まりはありません。節分の当日だけ飾る家庭もあれば、小正月の1月15日ごろから節分まで、節分から2月末まで、あるいは翌年の節分まで飾るという地域の例もあります。

村松山虚空蔵堂も、飾り始めや外す時期は地域の習わしによって異なると案内しています。節分は立春の前日で、年によって2月2日や3日など日付が変わるため、その年の日付を確認しましょう。

初めて飾るなら、節分の日に飾り、行事が終わったら取り外す方法が分かりやすいでしょう。実際の魚の頭を使う場合は、においや衛生面にも気を配り、長く放置しないようにします。

柊鰯の風習はいつからある?地域で違う呼び名

柊鰯の歴史をたどると、江戸時代の文献に、今の飾り方につながる記録が見つかります。同志社女子大学の吉海直人教授による解説では、1648年に刊行された俳諧集『山の井』に、イワシの頭とヒイラギの枝を鬼除けとして用いる記述があります。1688年の『日本永代蔵』にも似た風習が登場します。

平安時代の『土佐日記』にもヒイラギと魚の頭を門に飾る話がありますが、その魚はイワシではなくボラの若魚「なよし」です。柊鰯が平安時代から今とまったく同じ形で続いていた、とまでは断定できません。

地域によっては「焼嗅(やいかがし)」や「柊刺し」などとも呼ばれます。国際日本文化研究センターの民俗資料には、豆の枝を一緒に用いる三重県の例や、ヒイラギを「鬼の目突き」と呼んだ大阪府の例も記録されています。土地によって材料や飾り方に違いがあるのも、この行事の特徴です。

飾り終わった柊鰯はどう片付ける?

飾り終わったら、ヒイラギのとげや魚の骨に気を付けて取り外します。村松山虚空蔵堂は、神社などでお焚き上げしてもらう方法や、紙に包んで処分する方法を紹介しています。

ただし、お焚き上げを受け付ける品物は神社やお寺ごとに違います。魚の頭を含む柊鰯を持ち込めるか、必ず事前に確かめましょう。受け付けていない場合は、自治体のごみ分別ルールに従って片付けられます。

自宅で勝手に燃やしたり、猫や野鳥が食べられる場所に放置したりするのは避けてください。柊鰯は、昔の人が災いを遠ざけたいと願った気持ちを知り、節分に取り入れられる飾りです。安全に飾って、終わったら丁寧に片付けましょう。

参考資料