こいのぼりを飾るのはなぜ?鯉に込められた意味
こいのぼりを飾るのは、子どもが元気に成長し、困難を乗り越えて立派に育ってほしいという願いを込めるためです。鯉が選ばれたのは、急流をさかのぼった鯉が龍になるという中国の「登竜門」の伝説に由来します。もともと江戸時代に男の子の成長を祝う飾りとして広まり、現在では色とりどりの鯉に家族の願いを重ねて飾られています。
なぜ鯉が成長や出世の象徴になったの?
鯉は川だけでなく池や沼にも生息できる、生命力の強い魚として知られています。そのたくましい姿に、子どもがさまざまな困難を乗り越えるようにという願いが重ねられました。
もう一つの理由は、中国に伝わる「登竜門(とうりゅうもん)」の物語です。黄河の上流にある「龍門」という険しい滝を登りきった鯉が、龍に姿を変えて天に昇ったと伝えられています。
この伝説から、鯉の滝登りは努力を重ねて成功することや、立身出世の象徴になりました。難しい試験や大きな目標に挑む機会を「登竜門」と呼ぶのも、この物語から来ています。鯉が本当に龍になるという話ではなく、古くから伝わるたとえです。
こいのぼりには、子どもが健康でたくましく育ち、自分の道を切り開けるようにという願いが込められているのです。
こいのぼりは江戸時代の町人から広まった
5月5日の端午の節句に飾りを立てる風習は、こいのぼりよりも前からありました。江戸時代の武家では、男の子の成長を祝うため、家紋を描いた幟旗(のぼりばた)や吹き流しなどを屋敷の前に立てていました。
それを見た江戸の町人たちは、自分たちらしい祝い方として、縁起のよい鯉の姿を飾るようになったとされています。初めは幟につける小さな紙製の鯉でしたが、やがて風を受けて泳ぐ立体的な鯉のぼりへと発展しました。現在につながる形が広まったのは、江戸時代中期ごろとされています。
1838年(天保9年)に出版された『東都歳事記(とうとさいじき)』には、紙で作った鯉を竹の先に取り付けて幟とともに立てる習慣が、江戸の風俗として記録されています。今では全国で見かけるこいのぼりも、江戸の町人文化の中で育った飾りなのです。
黒・赤・青の鯉にはどんな意味がある?
今は何匹ものこいのぼりを並べることが多いですが、江戸時代には黒い「真鯉(まごい)」を一匹だけ飾る形が主流でした。明治時代以降に赤い「緋鯉(ひごい)」が加わり、昭和になると青や緑などの色も増えていきました。
現在よく見られる家族を表す飾り方では、次のように考えます。
- 黒い真鯉:お父さんを表す大きな鯉。
- 赤い緋鯉:お母さんを表す鯉。
- 青や緑などの子鯉:子どもたちを表す鯉。
この家族の表し方は、最初から決まっていたものではありません。子鯉にはピンクやオレンジなどの色もあり、家族や子どもの人数に合わせて選ぶことができます。色の組み合わせに全国共通の厳しい決まりがあるわけではありません。
吹き流しや矢車にも意味がある
鯉の上に付いている細長い布は「吹き流し」です。五色の吹き流しは、中国から伝わった「五行(ごぎょう)」という考え方にちなみ、悪いものを遠ざける願いが込められているとされています。
竿の先で回っている車輪のような飾りは「矢車(やぐるま)」です。矢が悪いものを射て追い払うという意味に重ね、魔よけの飾りとされています。鯉そのものが成長や成功を表すのに対し、吹き流しや矢車には、子どもの無事を願う意味もあるのです。
こいのぼりはどこに、いつ飾る?
こいのぼりは端午の節句の5月5日に向けて飾ります。飾り始める日が全国一律に決まっているわけではありませんが、春分の日を過ぎてから4月中旬ごろまでに用意する方法が紹介されています。片付けも、節句を終えてから梅雨に入る前の天気のよい日を選ぶとよいでしょう。
大きな竿を立てる庭用のほか、ベランダ用や室内に飾る小型のものもあります。家の広さや場所に合わせて選べるため、必ず高い場所に大きな鯉を掲げる必要はありません。
屋外に立てるときは、竿やこいのぼりが電線・電柱に触れない場所を選び、しっかり固定します。風が強い日には降ろしましょう。もし電線に引っかかった場合は自分で取ろうとせず、電力会社に連絡してください。
こいのぼりを眺めるときは、滝を登って龍になるという伝説を思い出してみてください。一匹一匹に、子どもが健やかに育ち、未来へ進んでほしいという願いが込められています。