おせちの数の子にはどんな意味がある?子孫繁栄との関係
おせち料理の数の子には、「子宝に恵まれ、子や孫の代まで家族が栄えますように」という子孫繁栄の願いが込められています。数の子はニシンの卵で、一つのかたまりに小さな卵がたくさん詰まっているためです。「ニシン」を「二親」に重ねる縁起のよい語呂合わせも伝わっています。
数の子は何の卵?
数の子は、魚のニシンの卵巣を塩漬けにしたり、乾燥させたりした食品です。農林水産省も、おせちに使う数の子をニシンの卵と紹介しています。
数の子をよく見ると、小さな粒がぎっしり集まって一つのかたまりになっています。一つ一つの粒が卵で、この数の多さが、お祝いの料理として大切にされてきた理由です。塩漬けにした数の子には、パリパリ、プチプチとした独特の歯ごたえがあります。
ニシンは北海道などの海でとれる魚です。北海道の水産資料では、春を中心とした産卵期に沿岸の海藻へ卵を産み付けることが紹介されています。私たちが食べる数の子は、産み付けられる前の卵巣を加工したものです。
なぜ「子孫繁栄」を願う料理なの?
子孫繁栄とは、子どもや孫、その次の世代へと命や家族のつながりが続き、栄えていくことです。たくさんの卵を持つニシンにあやかり、家族が代々続くようにという願いを数の子に託しました。
農林水産省は、数の子に「子宝に恵まれること」と「子孫繁栄」の二つの願いが込められていると説明しています。卵が一つのかたまりにたくさん並んでいる姿は、次の世代が増えていくことを連想させます。
こうした願いから、数の子は正月のおせちだけでなく、結婚式などの祝いの席にも用いられてきました。数の子の意味は、食べ物の形や性質に新年の願いを重ねたものです。
「数の子」という名前は卵の数から付いた?
「数の子」と書くと、「数が多い子」という意味で名付けられたように見えます。しかし、名前の由来には別の説明があります。
ニシンは地域によって「カド」や「カドイワシ」とも呼ばれていました。その魚の卵を「カドの子」と呼び、それが変化して「カズノコ」になったという説です。日本漢字能力検定協会の「漢字ペディア」でも、「鰊(かど)の子」が名前の由来として紹介されています。
一方、農林水産省は、ニシンが一度に多くの卵を産むことから「数」の字が当てられたという説も紹介しています。つまり、呼び名の由来と、卵の数に込めたおめでたい意味は分けて考えると分かりやすいでしょう。
ニシンを「二親」と書くのはなぜ?
おせちの数の子には、ニシンを「二親(にしん)」に重ねる言葉遊びもあります。二親とは、父と母の二人の親のことです。「二人の親から多くの子が生まれる」という考え方に結び付けて、数の子を子孫繁栄の縁起物とする説明が伝えられています。
紀文食品や豊海おさかなミュージアムでも、このいわれを紹介しています。ただし、「二親」はお祝いの意味を表す当て字で、魚の一般的な漢字表記は「鰊」です。数の子の呼び名が「二親」から生まれたという意味ではありません。
数の子はおせちの「祝い肴」の一つ
数の子は、正月を祝う料理の中でも「祝い肴(いわいざかな)」と呼ばれる品の一つです。黒豆や田作りなどとともに、おせちの最初の段である「一の重」に詰める例があります。
おせちはもともと、正月に迎える年神さまに供え、家族でいただく料理でした。数の子も、家族のこれからの幸せを願う一品として受け継がれてきました。
祝い肴三種の代表的な組み合わせには、関東と関西で違いがあります。
- 関東:数の子・黒豆・田作り(ごまめ)
- 関西:数の子・黒豆・たたきごぼう
どちらにも数の子が入り、家族が代々栄えるようにという願いを表します。組み合わせや重箱への詰め方は地域や家庭で異なるため、三品を必ずそろえる決まりではありません。
数の子は地域によってどう食べられている?
数の子は、塩漬けのものを塩抜きしてから、だしやしょうゆで味付けする食べ方がよく知られています。北海道の水産資料では、薄い塩水を何度か取り替えて塩を抜く方法が紹介されています。すでに味付けされた商品なら、包装に書かれた食べ方に従います。
正月に食べる料理にも地域色があります。北海道の「松前漬け」には、数の子をするめや昆布と合わせて漬けたものがあります。福島県の「豆数の子」は、青大豆の一種と味付けした数の子を和えた正月料理です。
数の子そのものを盛り付ける場合も、別の食材と合わせる場合も、たくさんの卵に子孫繁栄を願う意味は共通しています。食卓で粒の集まりや名前の由来を思い出すと、正月の料理に込められた願いが伝わりやすくなります。