おせちの黒豆にはどんな意味がある?名前に込められた願い
おせちの黒豆には、「一年をまめに元気で過ごし、まめまめしく働けますように」という願いが込められています。ここでいう「まめ」は、丈夫で健康なことや、こつこつと働く様子を表す言葉です。また、黒い色は魔除けの色と考えられ、災いを遠ざけて健康に暮らせるよう願う意味も重ねられています。
黒豆の「まめ」にはどんな願いが込められている?
「まめ」という言葉には、もともと丈夫で健康であるという意味があります。たとえば「まめに暮らす」は、病気をせず元気に過ごすことを表します。おせちの黒豆には、家族が一年を通して元気に過ごせるようにという願いが込められているのです。
もう一つは、「まめに働く」「まめまめしく働く」という言葉とのつながりです。こちらは、手間を惜しまず、こつこつと物事に取り組む様子を表します。農林水産省や紀文食品は、丈夫に暮らし、まじめに働けるようにという願いを黒豆のいわれとして紹介しています。
つまり、黒豆に託されているのは、健康であることと、日々の暮らしを丁寧に営めることの二つの願いです。「黒豆」という名前が健康を意味する言葉から生まれたのではなく、豆の「まめ」という響きに、こうした意味を重ねたと考えると分かりやすいでしょう。
なぜ黒い豆を選ぶ?色に込められた意味
おせちに使う黒豆は、「黒大豆」と呼ばれる、皮の黒い大豆です。黒豆という名前は、豆の表面の色を表しています。農林水産省の「にっぽん伝統食図鑑」でも、黒大豆は表皮が黒い大豆の一品種と説明されています。
正月料理では、この黒色にも意味を重ねてきました。日本の伝統的な考え方では、黒は邪気を払う魔除けの色とされ、黒豆には災いを防ぎ、健康で長生きできるようにとの願いが込められています。これは食べ物に託した縁起の考え方であり、黒豆を食べれば災いが起こらないという意味ではありません。
京都の黒豆煮には、日焼けするほどまめに働けるようにといういわれも伝わっています。黒い色と「まめ」という言葉の両方が、新年の願いにつながっているのです。
黒豆はおせちの「祝い肴」の一つ
黒豆は、おせちの中でも「祝い肴(いわいざかな)」と呼ばれる、正月を祝う基本の料理の一つです。祝い肴は重箱の最初の段に詰められることが多く、黒豆は長寿や健康を願う一品として親しまれてきました。
祝い肴の組み合わせには地域差があります。関東では黒豆・数の子・田作りの三品がよく挙げられます。一方、関西では数の子・たたきごぼうに、黒豆や田作りを合わせる例があります。地域や家庭によって料理の組み合わせは違っても、黒豆に健康を願う意味があることは共通しています。
黒豆はいつからおせちに入るようになった?
黒豆そのものは古くから日本で親しまれてきた食材です。農林水産省によると、10世紀の書物『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』には、「烏豆(くろまめ)」という名前が見られます。
黒豆を正月の料理として用意する習わしも、江戸時代には広まっていました。1830年の『嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)』には、正月に黒豆煮を特別に用意する習慣が記録されています。
今のおせちでは砂糖で甘く煮る黒豆が一般的ですが、江戸時代には砂糖を使わず、しょうゆで煮る方法もありました。その後、砂糖を使えるようになったこととともに、甘みのある黒豆煮が広まったとされています。甘く煮る料理の形も、時代とともに変わってきたのです。
黒豆はしわがあるほうが縁起がいい?
黒豆の仕上がりには、地域による考え方の違いもあります。京都生協は、関東では豆にしわを寄せて「しわが寄るまで長生きできるように」と願う習わしがある一方、関西ではしわのない、ふっくらとつややかな豆に「いつまでも若々しく」という願いを込めると紹介しています。
同じ黒豆でも、しわのある仕上がりには長寿への願いが、しわのない仕上がりには若々しさへの願いが表れているのです。ただし、これは地域に伝わる例であり、関東と関西ですべての家庭が同じ煮方をするわけではありません。
しわの有無で縁起のよしあしが決まるものではないので、家庭で親しまれている味や柔らかさを大切にしてよいでしょう。