おせちの伊達巻にはどんな意味がある?形に込められた願い
おせち料理の伊達巻には、学問が身につき、知識や教養が豊かになりますようにという願いが込められています。くるりと巻いた形が、昔の書物や絵を収めた「巻物」に似ているためです。また、「伊達」という言葉には華やかさやおしゃれという意味があり、祝いの席にふさわしい料理として親しまれています。
巻物に似た形が学問や知恵を表す
伊達巻を輪切りにすると、黄色と焼き色が重なった渦巻き模様が見えます。これは、紙を長くつなぎ、くるくる巻いて保管していた昔の書物を思わせる形です。かつては大切な文章や絵を巻物にして残していました。
この形から、伊達巻は学問成就や知識・教養が豊かになることを願う、おせちの縁起物とされています。農林水産省のおせち料理の資料でも、巻物に似た形に、文化・学問・教養を願う意味があると説明しています。
願いの中心は、勉強している子どもだけのものではありません。新しいことを学んだり、知恵を身につけたりできる一年にしたい、という気持ちにもつながる縁起のよい意味です。
伊達巻は何でできている?巻いた形の作り方
伊達巻は、魚のすり身に卵や砂糖などを混ぜ、厚く焼いてから巻いた料理です。ふんわりした食感と甘い味が特徴で、普通の卵焼きと違い、魚のすり身を使うのが伝統的な作り方です。
紀文食品は、伊達巻ができるまでを、すり身と卵を混ぜる、四角い型に入れて焼く、すだれで巻いて形をつける、という流れで紹介しています。焼いた生地を巻くことで棒状になり、切り口に渦巻き模様ができます。
巻くときには、竹を組んだ「巻きす」や、太い竹で凹凸をつけた「鬼すだれ」を使うことがあります。表面にできる筋や巻いた形も、伊達巻らしい見た目の特徴です。なお、同じような材料で焼いても、巻かずに仕上げたものは「厚焼き」と呼ばれます。
名前にある「伊達」はどういう意味?
「伊達」は、華やかで人目を引くことや、しゃれた身なりをすることを表す言葉です。江戸時代のおしゃれな人々は「伊達者(だてもの)」とも呼ばれました。
伊達巻の名前の由来には、いくつかの説があります。
- 華やかな料理という説:普通の卵焼きより見た目が豪華で、お祝いの席を彩るため、「伊達な巻き卵」と呼ばれたという説明です。
- 着物の帯に似ているという説:着物を整えるために巻く細い帯も「伊達巻」と呼ばれます。生地を巻く様子や、鬼すだれでつく縞模様が帯に似ていることから名付けられたという説明です。
国立国会図書館のレファレンス協同データベースには、岡山県立図書館が複数の語源辞典を調べた結果として、これらの説が紹介されています。伊達政宗が好んだ卵料理に由来するという話も伝わりますが、紀文食品は確かな由来とは断定していません。
名前の由来と、巻物の形に学問への願いを込めた理由は、分けて考えると分かりやすくなります。
伊達巻のルーツは長崎の「カステラかんぼこ」?
長崎市によると、江戸時代に長崎でポルトガル人の影響を受け、卵・砂糖・魚のすり身を使って作られた「カステラかんぼこ」が、伊達巻のもとになったとされています。「かんぼこ」は長崎で使われる、かまぼこの呼び名です。
この料理が江戸に伝わり、華やかな見た目から伊達巻と呼ばれるようになった、という説明があります。今ではおせち料理の定番ですが、はじめから現在と同じ名前や形だったわけではありません。
長崎市は、伊達巻の巻いた姿を布の反物に見立て、衣服に困らず暮らしが栄えるように願う意味も紹介しています。同じ形に、学問だけでなく、生活の豊かさへの願いを重ねる見方もあるのです。
形や呼び名に違いがあっても願いは同じ
伊達巻は切り口の渦巻き模様が見えるように盛り付けると、巻物に似た形がよく分かります。長崎市の作り方では、焼いて巻いた伊達巻を冷ましてから約1cmの厚さに切り、切り口を見せて盛り付けています。
地域によって呼び方が違うこともあります。紀文食品の用語集では、関西より西の地域で「の巻」や「トラ巻」などと呼ぶ例が紹介されています。使う材料や味付け、見た目が少し違っても、巻いた形を大切にしてきた料理です。
伊達巻の黄色い渦巻きに目を向けると、昔の巻物や正月の晴れやかな食卓に込められた願いが見えてきます。