おせちの昆布巻きにはどんな意味がある?「よろこぶ」との関係
おせち料理の昆布巻きには、喜びの多い一年になりますようにという願いが込められています。昆布の「こぶ」を「よろこぶ」という言葉に重ねた、縁起のよい語呂合わせです。さらに、長寿や子孫繁栄を願う意味も伝わっています。中にニシンを巻く料理では、魚の名前にもお祝いの意味が込められています。
昆布が「よろこぶ」に通じるのはなぜ?
昆布は「こんぶ」とも「こぶ」とも呼びます。その「こぶ」の響きを「よろこぶ」に重ね、昆布をおめでたい席で食べる習わしが生まれました。おせちの昆布巻きも、新しい年を喜び、家族にうれしい出来事が増えるようにという願いを表しています。
国立国会図書館が紹介する戦国時代の軍陣の記録には、出陣の際に打ちアワビ・勝栗・昆布を並べ、「打ち勝ち喜ぶ」という語呂に願いを込めた例があります。昆布と「喜ぶ」を結び付ける考え方は、正月以外のお祝いの場でも用いられてきたのです。
ただし、昆布を食べると必ず幸運が訪れるという意味ではありません。新しい年の喜びを願う気持ちを、食べ物の名前に託した風習です。
「養老昆布」「子生」に込められた二つの願い
昆布には「よろこぶ」以外にも、めでたい意味を持たせた漢字の当て方があります。農林水産省は、次の例を紹介しています。
- 養老昆布(よろこぶ):長く健やかに生きる「長寿」の願いを込めた当て字です。
- 子生(こぶ):子どもや孫、その次の世代へと家族が続く「子孫繁栄」の願いを重ねた当て字です。
「養老昆布」や「子生」は、お祝いの意味を表すための言葉遊びです。「昆布」という通常の名前の語源を表しているわけではありません。昆布巻きは、喜び・長寿・子孫繁栄という複数の願いを込められる料理なのです。
巻物の形にも意味がある?
昆布巻きは、広げた昆布で魚などを包み、くるくると巻いた料理です。農林水産省は、この巻いた形について、かつて大切な宝物だった書物の「巻物」に見立てたものだと説明しています。
昔の書物は、長い紙を巻いて保存することがありました。昆布の語呂合わせだけでなく、巻いた姿にもめでたい意味を重ねてきたのです。食卓では、切った断面に昆布と具材が重なった模様が見えます。
ニシンを巻くと子孫繁栄の願いも重なる
昆布巻きの中身として代表的なのは、乾燥させたニシンの「身欠きニシン」です。ニシンは「二親(にしん)」という字を当て、二人の親から子や孫へと命がつながるように願う縁起物とされています。
そのため、ニシンの昆布巻きには、昆布の「よろこぶ」と、ニシンの「二親」という二つの語呂合わせが重なります。農林水産省の北海道の郷土料理紹介でも、ニシンの昆布巻きに子宝や子孫繁栄への願いが込められていると説明しています。
ただし、昆布巻きの中身はニシンだけとは限りません。サケやイワシ、ブリ、タラコなどを使う地域や家庭もあります。魚の種類が違っても、昆布に喜びを願う意味は共通しています。
昆布巻きはどう作る?
一般的なニシンの昆布巻きは、昆布と身欠きニシンを柔らかく戻してから巻き、かんぴょうで結び、甘辛く煮た料理です。大まかな流れは次のとおりです。
- 乾燥昆布、かんぴょう、身欠きニシンを、それぞれ材料に合った方法で水に戻します。
- 柔らかくした昆布でニシンを巻き、戻したかんぴょうでほどけないように結びます。
- 鍋で昆布が柔らかくなるまで煮て、砂糖・しょうゆ・酒などで味を含ませます。
- 食べやすい長さに切って盛り付けます。
昆布は煮ると膨らむため、かんぴょうはきつく結びすぎないのがコツです。材料や昆布の厚さによって必要な煮込み時間が変わるので、柔らかさを見ながら仕上げます。
北海道から各地に広まった祝いの料理
北海道は昆布とニシンの産地として知られています。江戸時代には、北前船などによって北海道から昆布やニシンが日本海沿いの地域へ運ばれ、各地に昆布を使う食文化が根付きました。
富山県では身欠きニシンを巻いた昆布巻きが正月などのごちそうとして親しまれ、イワシやブリなどを使う例もあります。福井県には、大きく巻いたものを「棒巻き」「箸まき」と呼ぶ習わしがあります。
地域によって中身や形が違っても、昆布を「よろこぶ」に重ね、新しい年の幸せを願う気持ちは共通しています。