「付く」と「着く」の違いは?使い分け方

言葉・日本語
ソボチエ編集部

「付く」と「着く」は、どちらも「つく」と読みますが、意味によって使い分けます。何かがくっつく、加わるときは「付く」。目的地や決まった場所に達するときは「着く」が基本です。

例えば「服に汚れが付く」「駅に着く」と書きます。ただし、「着く」は移動して到着する場合だけでなく、「席に着く」のように場所を占める場合にも使います。文化庁の使い分け例と辞書に沿って、身近な例から確認しましょう。

「付く」と「着く」はどう違う?

文化庁の「異字同訓」の漢字の使い分け例では、「付く」は付着すること、加わること、意識を働かせることなど、「着く」はある場所に達したり、その場所を占めたりすることと整理されています。

  • 付く:服にしみが付く、商品におまけが付く、知識が身に付く、値段が付く。
  • 着く:目的地に着く、手紙が着く、席に着く、足が床に着く。

見分けるときは、「何かが新しく加わったのか」「人や物がある場所まで届いたのか」を考えると分かりやすくなります。

「付く」はくっつく・加わる・残るときに使う

「付く」は、もの同士が離れないようにくっつくことを表します。小学館の『デジタル大辞泉』や日本漢字能力検定協会の「漢字ペディア」でも、表面に密着したり、跡が残ったりする例が挙げられています。

  • くっつく:「服に泥が付く」「紙にのりが付く」
  • 跡が残る:「机に傷が付く」「床に足跡が付く」
  • 何かが加わる:「商品におまけが付く」「預金に利息が付く」
  • 力や性質が備わる:「勉強して学力が付く」「練習して自信が付く」
  • 決まる・定まる:「品物に値段が付く」「決心が付く」

このように、目に見えるものだけでなく、能力や気持ち、値段などにも「付く」を使います。「付着する」「付け加わる」という言葉を思い浮かべると、意味を覚えやすいでしょう。

また、「味方に付く」「目に付く」「気が付く」も「付く」の仲間です。単にものがくっつく場合だけに使う漢字ではありません。

「着く」は到着する・ある位置に達するときに使う

「着く」は、人やものが移動して、目指す場所にたどり着くことを表します。漢字ペディアには、列車が定刻に着く、手紙が着くといった例が載っています。

  • 移動して到着する:「駅に着く」「学校に着く」「目的地に着く」
  • 荷物などが届く:「注文した荷物が着く」「手紙が着く」
  • 決まった場所を占める:「席に着く」「自分の位置に着く」
  • 体の一部などが届いて触れる:「足が床に着く」「天井に手が着く」

「到着」の「着」と同じだと覚えるのが基本ですが、「席に着く」のように、その場所へ身を置く意味でも使います。

例えば「会場に着いたら、指定された席に着いてください」では、最初の「着く」は会場への到着、次の「着く」は席という場所を占めることです。どちらも「着」を使います。

例文を比べると使い分けが分かりやすい

同じ場面でも、何について「つく」と言っているかによって漢字が変わります。

  • 郵便:「手紙が家に着く」=送り先に届く。「手紙に切手が付く」=切手が貼り付いている。
  • 学校:「教室に着く」=教室まで来る。「制服に汚れが付く」=服が汚れる。
  • 床:「足が床に着く」=足が床まで届いて触れる。「床に足跡が付く」=跡が残る。
  • 家:「新しい家に着く」=その家まで移動する。「家に駐車場が付く」=駐車場が付属している。

「足が床に着く」と「床に足跡が付く」は、特に違いを覚えやすい組み合わせです。足そのものが床に達するなら「着く」。足跡という跡が残るなら「付く」を選びます。

「身に付ける」と「身に着ける」はどちらが正しい?

「つく」だけでなく、「つける」と読む場合も同じ考え方で使い分けます。文化庁の資料では、次のように示されています。

  • 知識を身に付ける:知識や技術などが、自分の能力として備わること。
  • 衣服を身に着ける:服などを体に着用すること。

ここで覚えておきたいのは、「知識を身に着ける」という書き方も、文化庁の資料では認められていることです。知識を服のように「着る」とたとえて考える場合には、「着ける」とも書けます。

ですから、知識や技術なら「付ける」が基本の目安ですが、「着ける」がいつでも誤りというわけではありません。一方、衣服を着用する意味なら「身に着ける」とすると伝わりやすくなります。

また、「名前を付ける」「条件を付ける」は、名前や条件を加えるので「付ける」です。「船を岸に着ける」は、船を岸まで寄せるので「着ける」を使います。

「仕事に就く」は「付く」「着く」とどう違う?

同じ「つく」という読み方には、もう一つ「就く」があります。「就く」は、仕事や役目、ある状況などに身を置くときに使います。

例えば、「新しい職に就く」「部長の任に就く」「帰途に就く」という言い方です。文化庁の使い分け例でも、「職に就く」「床に就く」が示されています。

「会社に着く」は会社の建物などに到着すること、「職に就く」は仕事や地位を得て、その役割を担うことです。行き先に到着するのか、役目を引き受けるのかで意味が変わります。

「手につかない」など、書き方に迷う場合は?

決まりきった表現では、単純な「くっつく」「到着する」だけでは判断しにくい場合もあります。漢字ペディアの同訓異義の欄には「仕事が手に着かない」という例があり、一方、『デジタル大辞泉』には「手に付かない」という表記も見られます。

そのため、「仕事が手につかない」のように、表記に幅がある言い回しもあります。迷ったときは、無理に漢字を決めずに平仮名で「手につかない」と書く方法もあります。

まずは「付く=くっつく・加わる」「着く=届く・到着する・場所を占める」という基本を押さえ、そのうえで慣用的な表現は辞書や用字の資料を確かめるとよいでしょう。

参考資料