「返す」と「帰す」の違いは?使い分け方

言葉・日本語
ソボチエ編集部

「返す」と「帰す」は、どちらも「かえす」と読みます。「返す」は、借りた物やお金を元の持ち主に戻したり、相手の働きかけに応えたりするときに使います。「帰す」は、人を家や故郷などの元の場所へ帰らせるときに使います。

例えば、「友達に本を返す」は本を持ち主に戻すことです。一方、「生徒を家に帰す」は、生徒が家に帰るようにすることです。何を元に戻すのか、誰を帰らせるのかに注目すると、漢字を選びやすくなります。

「返す」は借りた物やお金を元へ戻す

「返す」は、物を元の持ち主や場所に戻すときの漢字です。受け取った物を相手に渡し直す場合や、使った物を元の場所に置く場合にも使います。「返却」「返済」の「返」と考えると覚えやすいでしょう。

  • 友達に借りた本を返す
  • 図書館に本を返す
  • 借りたお金を返す
  • 拾った落とし物を持ち主に返す
  • 読んだ本を元の棚に返す

「借りたお金を返す」は、借金を返済することです。貸してもらった物やお金を戻す行動なので、「帰す」ではなく「返す」を使います。

「返す」は言葉・恩・向きにも使う

「返す」は、目に見える物だけを対象にするわけではありません。相手から受けた言葉や行為に応じる場合や、物の向きを逆にする場合にも使います。

  • 相手のあいさつに言葉を返す
  • 助けてもらった恩を返す
  • 手のひらを返す
  • 魚をひっくり返して両面を焼く
  • 大切なところを読み返す

「恩を返す」は、受けた親切に報いることです。「手のひらを返す」は向きを逆にすること、「読み返す」は同じ文章をもう一度読むことを表します。文化庁の使い分け例にも、言葉を返す、手のひらを返す、読み返すといった用例が載っています。

「帰す」は人を元の場所へ帰らせる

「帰す」は、人が自分の家や元いた場所に戻るようにするときの漢字です。「帰宅」「帰郷」の「帰」と同じ意味につながります。

  • 授業が終わったので生徒を家に帰す
  • 迷子の子どもを親元へ帰す
  • 訪ねてきた客を帰す
  • 故郷へ家族を帰す

「子どもを親元へ帰す」は、その子が家族のいる場所に戻れるようにすることです。「客を帰す」は、来ていた人に帰ってもらうことを表します。どちらも、人が帰るという動きに注目しています。

「本を返す」と「人を帰す」を比べてみる

同じ場面でも、対象が変わると使う漢字が変わります。例えば学校を思い浮かべてみましょう。

  • 先生から借りた教材を返す:借りた物を持ち主に戻す
  • 下校時間になり、生徒を帰す:生徒が家へ戻るようにする
  • 友達からの質問に言葉を返す:相手の言葉に応える

人が登場する文章だから「帰す」と決めるわけではありません。「友達に言葉を返す」では、返しているものは言葉です。文の中で何を「かえす」のかを考えるのがポイントです。

「帰る」と「帰す」、「返る」と「返す」の関係

「帰る」と「返る」の違いも知っておくと、書き分けが簡単になります。

  • 子どもが家に帰る:子ども自身が家へ戻る
  • 子どもを家に帰す:ほかの人が子どもを帰らせる
  • 貸した本が返ってくる:本が元の持ち主へ戻る
  • 借りた本を返す:借りた人が本を持ち主へ戻す

「帰る」のように、人が自分で戻る場合と、「帰す」のように人を戻らせる場合を区別すると分かりやすくなります。「返る」「返す」は、本やお金が戻るときだけでなく、元の状態に戻るときにも使われます。

迷ったときは「返却」か「帰宅」かで考える

漢字に迷ったら、「返却する」「返済する」に近い意味か、「帰宅させる」「帰郷させる」に近い意味かを考えましょう。借りた物を戻すなら「返す」、人を帰らせるなら「帰す」が基本です。

ただし、「返す」は言葉や恩にも使えます。「物なら返す、人なら帰す」という単純な分け方よりも、元へ戻す・応えるのか、帰らせるのかという行動の違いで判断すると使い分けやすくなります。

まとめ

「返す」は本やお金を戻すことに加え、恩や言葉に応えること、向きを逆にすることにも使います。「帰す」は人を家や元の場所に帰らせるときの表記です。何が戻るのか、誰が帰るのかを確かめると、正しく書き分けられます。

参考資料