「犬も歩けば棒に当たる」の意味は?良い意味・悪い意味どちら?
「犬も歩けば棒に当たる(いぬもあるけばぼうにあたる)」には、行動すると思わぬ災難に遭うという悪い意味と、行動すると思いがけない幸運に出会うという良い意味の二つがあります。どちらも国語辞典に載っている使い方です。
犬が棒に当たると聞くと悪い出来事を思い浮かべますが、実際には良い出来事にも使われます。二つの意味と、会話で迷わない使い分け方を見ていきましょう。
悪い意味と良い意味はどう違う?
小学館の『デジタル大辞泉』や日本漢字能力検定協会の「漢字ペディア」は、このことわざに二つの意味を挙げています。
- 悪い意味:何かをしようとして動き回ると、思いがけない災難に遭うこともある。
- 良い意味:出かけたり何かを始めたりすると、予想もしなかった幸運に巡り合うこともある。
同じ「行動すること」がきっかけでも、その結果が災難なのか幸運なのかで意味が変わります。「良い意味で使うのは間違い」というわけではありません。
悪い意味で使うときの例文
悪い意味では、余計なことをしたために、思わぬ面倒や災難に遭ったという場面で使います。何かをしようとすれば、それだけ予想外の困りごとにぶつかる可能性もある、という戒めです。
例えば、こんな言い方ができます。
- 「頼まれていない書類整理を手伝ったら、大事な資料を別の箱にしまってしまった。犬も歩けば棒に当たるということだね」
- 「用事もないのに遠回りしてみたら、急な雨に降られてしまった。犬も歩けば棒に当たるとはこのことだ」
一つ目は、よかれと思ってしたことが、かえって面倒を招いた例です。二つ目は、出歩いたことで予想外の災難に遭った例です。どちらも、動かなければ起こらなかった困りごとを表しています。
良い意味で使うときの例文
良い意味では、何かをしてみたことで、予想外の良い出会いや機会に恵まれたときに使います。何もしないでいるより、行動することで幸運に巡り合うこともある、という意味です。
- 「初めて地域の催しに参加したら、同じ趣味の仲間が見つかった。犬も歩けば棒に当たるということだね」
- 「買い物のついでに寄った店で、ずっと探していた道具を見つけた。犬も歩けば棒に当たるというものだ」
この場合は、動いたことが良い結果につながっています。ただし、このことわざは、行動すれば必ず成功するという約束ではありません。思いがけない幸運に出会う場合もある、というたとえです。
なぜ犬が棒に当たるの?
悪い意味のたとえは、出歩いていた犬が棒でたたかれてしまうという場面から理解できます。じっとしていれば遭わずに済んだかもしれない災難に、歩き回ったことで出会ってしまうというわけです。
では、良い意味のときは、棒が何か幸運なものを指しているのでしょうか。そうではありません。『ことわざを知る辞典』は、幸運に出会ったことを、あえて「棒に当たる」という反対の表現で言う、ひねりのある言い方だと説明しています。
そのため、棒に当たる場面そのものを良い出来事と考える必要はありません。ことわざ全体を、予想外の出来事に巡り合うたとえとして捉えると分かりやすくなります。
「本来は悪い意味」という説明は正しい?
漢字ペディアでは、もともとは災難に遭うという意味で、今では主に幸運に出会う意味で用いると説明しています。棒でたたかれる犬の姿を考えると、悪い意味が自然に感じられます。
ただし、幸運を表す使い方も、江戸時代から確認されています。『精選版 日本国語大辞典』には、幸運を表す用例として1714年ごろの浄瑠璃、災難を表す用例として1758年の浄瑠璃が載っています。
これらは辞典に記録された古い使用例であり、ことわざやそれぞれの意味が初めて生まれた年を示すものではありません。辞書編集者の神永曉さんも、古い用例の年代だけでは、どちらの意味が先に使われ始めたか判断できないと説明しています。
また、ことわざ研究家の時田昌瑞さんは、悪い意味から良い意味に変わったと単純に考えることには根拠上の問題があると指摘しています。つまり、良い意味を最近生まれた誤った使い方と決めつけることはできません。
江戸いろはかるたの「い」の札としても有名
「犬も歩けば棒に当たる」は、江戸のいろはかるたで「い」の札に使われていることわざです。この札で始まることから、江戸のいろはかるたは「犬棒かるた(いぬぼうかるた)」とも呼ばれます。
小学館の『デジタル大辞泉』も「犬棒カルタ」を、最初の札がこのことわざであるいろはかるたの一種として説明しています。
ただし、かるたに使われていることと、ことわざ自体がかるたから生まれたことは別です。ことわざは、かるた以外の古い文章にも登場しています。
意味を取り違えずに使うコツ
二つの意味があるため、ことわざだけを突然言うと、良い意味なのか悪い意味なのか分からない場合があります。前後の出来事を一緒に伝えるのが分かりやすい使い方です。
- 幸運を伝えるなら:「出かけたおかげで思わぬ出会いがあった。犬も歩けば棒に当たるということだね」
- 災難を伝えるなら:「余計なことに首を突っ込んで面倒になった。犬も歩けば棒に当たるということだね」
相手を励ますために使う場合も気を付けましょう。良い意味の辞書の説明には、特別な取り柄がない人でも幸運に出会うことがある、という意味合いを含むものもあります。相手の努力や実力を軽く見ていると思われそうなら、「行動してよかったですね」「思わぬ幸運でしたね」と、そのまま伝える方が自然です。