「異口同音」の意味は?「口をそろえる」との違い

言葉・日本語
ソボチエ編集部

「異口同音(いくどうおん)」は、多くの人が口をそろえて同じことを言うこと、また、多くの人の意見が一致することを表す四字熟語です。

「口をそろえる」も、複数の人が同じことを言うという意味で、二つの表現に大きな意味の違いはありません。「異口同音」は四字熟語として文章や改まった説明にも使いやすく、「口をそろえる」は普段の会話でも自然に使える言い方です。

「異口同音」は多くの人が同じことを言うという意味

小学館の『デジタル大辞泉』と日本漢字能力検定協会の「漢字ペディア」は、「異口同音」を、多くの人が同じことを言ったり、考えや意見が一致したりする意味だと説明しています。

例えば、ある行事の感想を一人ずつ聞いたところ、ほとんどの人が「また参加したい」と答えたとします。発言した人はそれぞれ違っていても、感想は同じです。こうしたときに「参加者は異口同音に、また参加したいと話した」と言えます。

「口をそろえる」との違いは?

小学館の『デジタル大辞泉』は「口をそろえる」を、各人が同じことを言うことと説明し、意味の説明に「異口同音」を用いています。つまり、基本的には言い換えられる表現です。

  • 異口同音:「参加者は異口同音に賛成した」のように、多くの人の発言や意見が一致したことを四字熟語で表す。
  • 口をそろえる:「参加者は口をそろえて賛成した」のように、複数の人が同じことを言う様子を、日常的な言い回しで表す。

前者は少し改まった印象を出したい文章に、後者は会話や分かりやすい説明に使いやすいでしょう。ただし、これは使う場面の目安であって、片方が会話で使えない、という決まりではありません。

また、『精選版 日本国語大辞典』は「口をそろえる」について、二人以上の人が同時に同じことを言う意味も示しています。「異口同音」は多くの人の意見の一致を表すので、人数や場面を考えて選ぶこともできます。

「異口」と「同音」は何を表している?

「異口」は、異なる人たちの口、つまり多くの人がそれぞれ発する言葉を指します。「同音」は、同じことを口にすることを表しています。

ここでいう「異なる」のは人や口であって、意見がそれぞれ違うという意味ではありません。異なる人たちが、同じ内容を話すと考えると、四字熟語の意味を覚えやすくなります。

なお、「異口同音」の読み方は通常「いくどうおん」です。『精選版 日本国語大辞典』には「いこうどうおん」という読み方も載っていますが、まずは「いくどうおん」を覚えておけばよいでしょう。

どんなときに使う?身近な例文

複数の人が同じ感想や意見を述べたときに使えます。賛成する場合だけでなく、反対する場合や驚いた場合にも使える言葉です。

  • 学校:「遠足の感想を聞くと、子どもたちは異口同音に『楽しかった』と答えた」
  • 会議:「集まった人たちは異口同音に、その案を支持した」
  • 反対意見:「説明を聞いた参加者たちは、異口同音に『もう少し時間が必要だ』と話した」
  • 家族:「新しく作った料理を出すと、家族は口をそろえて『おいしい』と言ってくれた」
  • 職場:「新しい道具を使った同僚は、口をそろえて『前より使いやすい』と言った」

「異口同音に賛成する」「異口同音に答える」「口をそろえて言う」のように使います。どちらも、何について意見が一致したのかを続けると、読み手に状況が伝わりやすくなります。

全員が同時に同じ言葉を言わないと使えない?

その必要はありません。「異口同音」は、多くの人の意見が一致することも意味します。例えば、会議で一人ずつ発言し、表現が少し違っていても、全員が同じ提案を支持しているなら「異口同音に賛成した」と表現できます。

ただし、意見が分かれているのに「全員が異口同音に賛成した」と書くのは正確ではありません。多くの人が一致したのか、参加者全員が一致したのかを、実際の状況に合わせて書き分けましょう。

「口をそろえる」も、複数の人が同じ内容を話したことを表します。実際に同時に声を出した場面にも、意見がそろっている場面にも使えます。

「口を合わせる」とは同じ意味?

「口を合わせる」は、相手とあらかじめ話を合わせ、言うことが違わないようにする意味で使われることがあります。小学館の『デジタル大辞泉』では、しめし合わせて同じことを言う意味として説明されています。

例えば、「見つからないように二人で口を合わせた」と言えば、事前に相談して話をそろえたという意味に受け取られます。

一方、「異口同音」は、複数の人が同じ意見を言うことを表す言葉で、事前に相談したという意味は含みません。なお、「口をそろえる」にも、しめし合わせて同じことを言う用法が辞書に載っています。わざと話を合わせたかどうかは、言葉だけで決めず、前後の文から判断します。

由来と昔からの使われ方

「異口同音」は、中国の歴史書『宋書(そうしょ)』にも登場する古い表現です。集英社の『スピーチに役立つ四字熟語辞典』は、この書物にある用例を紹介しています。

また、小学館の『精選版 日本国語大辞典』には、日本での古い使用例として、1060年ごろの漢詩文集『本朝文粋(ほんちょうもんずい)』の文章が掲載されています。

これらは文献に残る使用例です。どの年に「異口同音」という言葉が初めて作られたかを示すものではありません。

「異句同音」と書かないように注意

「異口同音」は「口」を使って書きます。「異句同音」は誤った表記です。小学館の『四字熟語を知る辞典』や集英社の辞典でも、間違えやすい漢字として注意されています。

「異口」は多くの人の口を表すと覚えると、書き間違えにくくなります。

「異口同音」と「口をそろえる」は、どちらも複数の人が同じことを話す場面で使える言葉です。意味の差を無理に分けるよりも、文章の雰囲気や、何人がどのように話したのかに合わせて選ぶと自然です。

参考資料