「本末転倒」の意味は?使い方を例とともに解説
「本末転倒(ほんまつてんとう)」は、本当に大切なことと、それほど重要ではないことを取り違えてしまうという意味の四字熟語です。何かを達成するための方法ばかりにこだわって、肝心の目的を忘れてしまうときなどに使います。
例えば、勉強するためにノートをきれいにまとめていたのに、飾り付けに時間を使いすぎて内容を覚える時間がなくなったら、本末転倒です。言葉の成り立ちと、暮らしや仕事での自然な使い方を見ていきましょう。
「本末転倒」は大切なことと小さなことを取り違える意味
小学館の『デジタル大辞泉』と日本漢字能力検定協会の「漢字ペディア」では、物事の根本にあたる重要なことと、枝葉にあたるささいなことを取り違える意味として説明しています。
この言葉は、本来の目的を果たすことよりも、そのための手段や細かな部分を優先してしまうときによく使われます。
例えば、家計の支出を減らすために買い物を工夫しているのに、「送料を無料にしたい」という気持ちから必要のない物まで買ってしまった場合です。送料を節約することばかり考えて、支出を減らすという目的から遠ざかっています。
何かに手間をかけたこと自体が悪いわけではありません。何を大切にするための行動なのか、その順番が逆になっていることを表すのが「本末転倒」です。
「本」と「末」と「転倒」は何を表している?
「本末(ほんまつ)」には、物事の根本と枝葉、重要なこととそれほど重要でないこと、という意味があります。草木にたとえると、「本」は幹や根元にあたる大切な部分、「末」は枝葉の先の部分です。
「転倒(てんとう)」には、順序や上下が逆さまになるという意味があります。つまり「本末転倒」は、大切な根本と、その先にある細かな部分の扱いが逆になることを表しています。
集英社の『スピーチに役立つ四字熟語辞典』も、重要なことよりもつまらないことにこだわる意味で説明しています。「本」と「末」の関係を思い浮かべると、言葉の意味を覚えやすくなります。
暮らしや仕事での使い方と例文
一見すると一生懸命に取り組んでいても、本来の目的に必要なことがおろそかになった場面で使えます。
- 勉強:「試験勉強のためのノート作りに夢中になり、問題を解く時間がなくなっては本末転倒だ」
- 買い物:「節約するつもりなのに、送料無料にするために余計な物を買うのは本末転倒だね」
- 片付け:「部屋を使いやすくするために収納用品を買いすぎて、かえって動きにくくなったら本末転倒です」
- 仕事:「報告書を読みやすくするために見た目を整えていたが、肝心の数字を確認し忘れては本末転倒だ」
どの例も、初めの目的は間違っていません。しかし、目的をかなえるための一部分に気を取られて、もっと大切なことが後回しになっています。
「本末転倒だ」「本末転倒になる」はどう使う?
「本末転倒」は、会話や文章では次のような形で使えます。
- 本末転倒だ:「時間を節約するための準備に何時間もかかるのは、本末転倒だ」
- 本末転倒になる:「便利にするはずの手続きが複雑になれば、本末転倒になります」
- 本末転倒している:「見た目を優先して説明が分かりにくくなるのは、本末転倒している」
- 本末転倒した考え:「本来の目的を忘れた、本末転倒した考えを見直そう」
すでに起きている状態を指すことも、これから起こりそうなことへの注意として使うこともできます。何が本来の目的なのかを一緒に示すと、相手にも伝わりやすくなります。
本末転倒になっているかを見分けるには?
迷ったときは、今していることと、最初に達成したかったことを比べてみましょう。
- 最初に何を実現したかったのか。
- 今、時間やお金をかけていることは何か。
- そのために、最初の目的が後回しになっていないか。
例えば、家を片付ける目的が「必要な物をすぐ取り出せるようにすること」なら、収納箱を増やすことより、物の場所を決めて取り出しやすくすることが大切かもしれません。
細かな準備にも意味はありますが、目的をかなえる妨げになっているなら、優先するものを見直すきっかけになります。
「主客転倒」との違いは?
「主客転倒(しゅかくてんとう)」は、主と客の立場が逆になることや、物事の重要な順序や立場が入れ替わることを表します。『デジタル大辞泉』では「本末転倒」と似た意味の言葉として挙げられています。
- 本末転倒:根本的に大切なことと、付随する小さなことの扱いを取り違える。
- 主客転倒:主なものと、それに従うものの関係や立場が逆になる。
二つは意味が重なる場合もあります。特に、何が主役で何が脇役なのかという関係を表したいときは「主客転倒」、本来の目的よりも細かなことを優先してしまう場面では「本末転倒」が分かりやすいでしょう。
「元も子もない」とは意味が違う?
「元も子もない(もともこもない)」は、元金も利息もなくなることから、すべてを失って何も残らないという意味の言葉です。
「本末転倒」は、大切なこととそうでないことの優先順位が逆になっている状態を表します。それに対し「元も子もない」は、無理をした結果などによって大事なものまで失ってしまうことに重点があります。
例えば、費用を減らそうとして必要のない物を買い足すのは「本末転倒」です。一方、失敗して貯金をすべて失ったという場合には「元も子もない」が合います。どちらもよくない結果の話に使えますが、注目している点は違います。
古い表記と使用例
「本末転倒」は、古くは「本末顛倒」とも書かれました。『四字熟語を知る辞典』では、昔は「転倒」を「顚倒」と書くことが多かったと説明しています。現在は「本末転倒」という表記を使えばよいでしょう。
また、『精選版 日本国語大辞典』には、河上肇(かわかみはじめ)の『貧乏物語』にある1916年の用例が掲載されています。そこで使われている表記は「本末顛倒」です。
これは辞書に載る古い使用例であり、1916年にこの四字熟語が初めて作られたという意味ではありません。
相手に使うときは目的を具体的に伝えよう
「本末転倒」は、相手の考えや行動の優先順位が間違っていると指摘する言葉でもあります。相手に直接「それは本末転倒だ」とだけ言うと、責められたと感じさせる場合があります。
例えば、「本来は作業を早く終わらせるための方法ですよね。準備に時間がかかりすぎていないでしょうか」と、目的と今の状況を具体的に伝える方が分かりやすくなります。
「本末転倒」は、何のためにしているのかを忘れて、大事なことを後回しにしてしまう状態を表す言葉です。目的と手段を比べながら使うと、意味が正しく伝わります。