「姑息」の意味は?「卑怯」と同じ意味ではない?
「姑息(こそく)」は、本来「一時しのぎ」「その場しのぎ」を意味する言葉です。問題を根本から解決せず、目の前のことだけを何とかしようとする様子を表します。
「卑怯(ひきょう)」「ずるい」という意味で使われることもありますが、二つの意味は同じではありません。違いを知ると、「姑息な手段」という表現がなぜ誤解されやすいのかが分かります。
「姑息」の本来の意味は「一時しのぎ」
小学館の『デジタル大辞泉』と『精選版 日本国語大辞典』では、「姑息」を一時の間に合わせや、その場しのぎを表す言葉として説明しています。
例えば、仕事で同じミスが何度も起きているのに、原因を調べず、起こるたびにその場の対応だけを繰り返す場合です。「姑息な対応」と言えば、当面は切り抜けても、根本的な問題を解決していないことを表せます。
大切なのは、長い目で見た解決ではなく、今だけをしのぐことに重点がある点です。急いで一時的な対応をすること自体が、必ず悪いわけではありません。ただ、問題を放置して間に合わせばかりを続けるような場合には、批判的な意味合いで使われます。
「卑怯」との違いは何?
「卑怯」は、正々堂々としていないことや、物事に正面から向き合おうとしないことを表します。「姑息」の本来の意味とは、何を問題にしているかが違います。
- 姑息:目先の問題を、その場だけの方法でしのごうとすること。
- 卑怯:公平でない、正々堂々としていないやり方をすること。
例えば、「毎回の遅れを臨時の人手で補うだけで、仕事の進め方は変えない」という対応は、一時しのぎという意味で姑息だと言えます。一方、「人の手柄を自分のものにして評価を得る」という行為は、卑怯なやり方です。
一時しのぎの対応が、必ずしも卑怯とは限りません。反対に、卑怯な行為が、必ずしも一時しのぎとも限りません。ただし、一つの行動に両方の性質があることはあります。
「姑息」という漢字にはどんな意味がある?
『デジタル大辞泉』によると、「姑」には「しばらく」、「息」には「休む」という意味があります。「しばらく息をつく」というところから、一時の間に合わせや、その場しのぎを表す言葉になりました。
『精選版 日本国語大辞典』では、中国の古典『礼記』に見える言葉であることも紹介されています。日本でも古くから、目先だけの対応を批判するような文脈で使われてきました。
では、なぜ「卑怯」という意味が広まったのでしょうか。辞書編集者の神永曉さんは、その場だけを取り繕うことを「ずるい」と感じたためではないかと説明しています。これは意味の広がり方についての一つの考え方です。
文化庁の調査では「卑怯な」が7割以上
文化庁の令和3年度「国語に関する世論調査」では、「姑息な手段」の「姑息」をどういう意味だと思うか尋ねています。2022年1月から2月に実施された調査で、結果は次のとおりでした。
- 「一時しのぎ」という意味:17.4%
- 「ひきょうな」という意味:73.9%
- 両方の意味:5.9%
本来の意味とされてきた「一時しのぎ」を選んだ人より、「ひきょうな」を選んだ人が大幅に多い結果です。なお、これは言葉の意味をどう理解しているかを尋ねた調査であり、実際の会話で使う頻度を示したものではありません。
平成22年度の調査では、「一時しのぎ」が15.0%、「ひきょうな」が70.9%でした。ただし、令和3年度は郵送、平成22年度は面接という違いがあります。二つの数字を単純に比べ、意味の受け取り方が増減したと断定することはできません。
「卑怯」という意味で使うのは間違い?
「一時しのぎ」が辞書などで本来の意味とされてきたことは確かです。ただし、現在の使われ方を一律に間違いだと切り捨てるのも適切ではありません。
『デジタル大辞泉』には、「その場だけの間に合わせ」という意味から、近年は「ひきょうなさま」「正々堂々と取り組まないさま」の意味でも使われるという説明があります。広まった用法を辞書も取り上げているのです。
そのため、「姑息な手段だ」と聞いた人が、一時しのぎの対策を批判していると受け取る場合もあれば、ずるいやり方を批判していると受け取る場合もあります。前後の話から意味が分からないと、意図が食い違うおそれがあります。
誤解を避ける言い換えと使い方
どちらの意味を伝えたいかはっきりしているなら、次のように言い換えると分かりやすくなります。
- 一時的な対応を批判するなら「その場しのぎの対策」「一時しのぎの方法」
- 正々堂々としていないことを批判するなら「卑怯なやり方」「ずるい手段」
- 問題を解決していないことを示すなら「根本的な解決になっていない」「間に合わせにすぎない」
例えば「姑息な方法で済ませないで」と言うより、「その場しのぎではなく、原因から直してほしい」と伝えれば、相手に何を求めているかが明確になります。「姑息」は本来の意味と広まった意味の両方を知ったうえで、場面に合わせて使うとよい言葉です。