「檄を飛ばす」の意味は?励ますという意味ではない?

言葉・日本語
ソボチエ編集部

「檄を飛ばす(げきをとばす)」の本来の意味は、自分の主張や考えを広く人々に知らせ、賛同を求めたり、行動を呼びかけたりすることです。単に「頑張れ」と励ますこととは意味が違います。

ただし、現在は人を励まして元気づける意味でも広く使われています。文化庁の報告でも、その使い方を一律に誤りとする必要はないと説明されています。本来の意味と広まった意味を分けて見ていきましょう。

「檄を飛ばす」の本来の意味は、主張を広く伝えて賛同を求めること

小学館の『デジタル大辞泉』によると、「檄を飛ばす」とは、自分の主張や考えを広く人々に知らせて同意を求め、そこから人々に立ち上がるよう促すことです。『精選版 日本国語大辞典』にも、人々を急いで呼び集める意味や、自分の考えに賛同してもらおうとする意味が載っています。

例えば、地域の代表者が「川をきれいに守るため、みんなで清掃活動に参加しよう」と住民に呼びかける場面です。自分の考えを示し、それに賛成して一緒に行動してほしいと訴えるなら、「地域の人々に檄を飛ばした」と表せます。

この表現で大切なのは、ただ知らせるだけでなく、自分の考えへの賛同や行動を促すという点です。また、大声を出したり、怒鳴ったりする必要はありません。話す調子よりも、何を伝え、何を求めているかが中心になります。

「励ます」「激励する」とはどう違う?

「励ます」は、相手に元気や勇気を与え、頑張ろうという気持ちを起こさせることです。一方、「檄を飛ばす」の本来の意味は、自分の主張を伝えて賛成や行動を求めることです。

  • 励ます:落ち込んでいる人に「大丈夫。次も頑張ろう」と声をかける。
  • 檄を飛ばす:「この方針で取り組もう」と考えを広く訴え、賛同して行動するよう呼びかける。

例えば「監督が選手に檄を飛ばした」という表現は、現在では「監督が選手を励ました」という意味で使われることがよくあります。しかし、それだけでは、本来の意味にある「自分の考えを広く伝えて賛同を求める」という部分ははっきりしません。

二つの意味が重なる場合もあります。自分の考えを示して大勢に行動を呼びかける言葉が、同時に人々を勇気づけることもあるためです。ただし、「励まし」と「檄を飛ばす」は、もともと同じ意味ではありません。

「檄」とはどんなもの?「激」とは違う漢字

「檄」は、もともと古代中国で、人を呼び集めたり、言い聞かせたりするための文書を指しました。木の札に書かれた文書も使われたとされます。

その後、自分たちの正しさや主張を述べて、人々に賛同や行動を呼びかける文書を「檄」「檄文(げきぶん)」と呼ぶようになりました。「檄を飛ばす」には、こうした呼びかけを広く伝える意味があるのです。

「檄」は、「激励」の「激」とは別の漢字です。「激」は気持ちや動きの激しさなどに使われますが、「檄」は人々に訴える文書を表します。「激を飛ばす」と書くのではなく、「檄を飛ばす」と書きます。

辞書編集者の神永曉さんは、「激励」の「激」との混同が、励ます意味で受け取られる一因ではないかと述べています。これは意味が広まった理由についての一つの見方です。

文化庁の調査では「励まして活気づける」が67.4%

文化庁が2018年3月に実施した平成29年度「国語に関する世論調査」では、「檄を飛ばす」の意味を尋ねたところ、次の結果でした。

  • 「自分の主張や考えを、広く人々に知らせて同意を求めること」:22.1%
  • 「元気のない者に刺激を与えて活気付けること」:67.4%
  • 「両方の意味」:2.6%

本来の意味とされる方を選んだ人は約2割で、励ます意味を選んだ人は約7割でした。この結果は、調査当時に人々が意味をどう理解していたかを示すもので、すべての会話でどちらの意味が使われたかを示す数字ではありません。

平成15年度の調査では本来の意味が14.6%、励ます意味が74.1%、平成19年度の調査ではそれぞれ19.3%と72.9%でした。平成29年度までの三つの調査では、本来の意味を選ぶ割合は少しずつ高くなっていますが、いずれも励ます意味の方が多数でした。

励ます意味で使うのは間違いといえる?

本来の意味から見ると、「元気づける」という使い方は異なる用法です。ただし、今では辞書にもこの使い方が紹介されています。

『デジタル大辞泉』では、励ます意味について「誤用が定着して」使われるようになったと補足しています。『精選版 日本国語大辞典』も、誤って激励の意味で用いられる場合があると説明しています。

さらに、文化審議会国語分科会の2018年の報告は、広く使われ、辞書にも取り上げられている用法を、一方的に間違いとして退ける必要はないという考え方を示しています。同時に、本来の意味を大切にする人がいることへの配慮も求めています。

つまり、「励ます」が本来の意味だとは言えませんが、現在の使われ方をすべて誤用だと決めつけるのも適切ではありません。

誤解を避ける言い換え方

「檄を飛ばす」は、読む人や聞く人によって、主張を訴える場面にも、誰かを励ます場面にも受け取られます。特に何をしたか正確に伝えたい文章では、具体的な表現が分かりやすくなります。

  • 主張への賛同を求めるなら「考えを広く訴えた」「賛同を呼びかけた」
  • 行動を起こしてほしいなら「参加を呼びかけた」「立ち上がるよう訴えた」
  • 人を励ましたなら「激励した」「勇気づけた」「奮起を促した」

例えば「監督が選手に檄を飛ばした」と書く代わりに、「監督が選手を激励した」と書けば、励ましたことが明確になります。言葉の本来の意味を知り、伝えたい内容に合わせて使い分けましょう。

参考資料