「猫の手も借りたい」の意味は?忙しいときに使う理由
「猫の手も借りたい(ねこのてもかりたい)」は、とても忙しくて人手が足りず、どんな手伝いでもほしいという意味のことわざです。仕事や用事が次々に重なり、「誰かに手伝ってもらわないと終わりそうにない」と感じる場面で使います。
どうして「猫の手」なのでしょうか。人の仕事を手伝うのが難しい猫にまで助けを求めたいほど、忙しさが大変だという、少しおかしみのあるたとえだからです。
「猫の手も借りたい」は人手が足りないほど忙しいこと
小学館の『デジタル大辞泉』では、「猫の手も借りたい」を、非常に忙しくて人手が足りず、どんな手伝いでもほしいことのたとえと説明しています。『精選版 日本国語大辞典』も、非常に忙しく手不足な様子を表す言葉としています。
例えば、家族で引っ越しの準備をしているのに、片付けや荷造りがなかなか進まないときです。「明日が引っ越しなのに、まだ荷造りが終わらない。猫の手も借りたいよ」と言えば、誰かに少しでも手伝ってほしい気持ちが伝わります。
この表現では、忙しいことに加えて、手伝ってくれる人がほしいことが大切なポイントです。一人で十分にこなせる用事が多いだけの場合よりも、仕事がたまって人手を必要としている場面に向いています。
なぜ猫の「手」を借りたいの?
人間がする荷造りや掃除、店の接客などの仕事を、猫が手伝うのは難しいものです。それなのに、猫の前足まで借りたいと思うほど人手が足りない。そんな大げさな表現で、忙しさを伝えています。
『故事ことわざ辞典』では、ネズミを捕る以外には人の役に立たないような猫の手でも借りたいほど忙しい、というたとえで説明しています。猫が本当に何の役にも立たないという意味ではありません。普通なら仕事を頼まない相手にさえ、助けてほしいという気持ちを表すのです。
小学館の辞書公式サイト「ことばのまど」でも、人の役に立つ仕事をしないと思われていた猫の手を借りたくなるほどの忙しさ、という見方が紹介されています。
「人手が足りません」と言うよりも、切羽詰まった様子が目に浮かぶところが、このことわざのおもしろさです。
江戸時代にも使われていた言葉
「猫の手も借りたい」は、最近できた表現ではありません。『精選版 日本国語大辞典』には、1724年の浄瑠璃『関八州繋馬(かんはっしゅうつなぎうま)』の中にある使用例が載っています。当時から、おめでたい出来事に伴う忙しさを表す言葉として使われていました。
ただし、この作品がことわざの生まれた場所だと確定しているわけではありません。朝日新聞の取材に答えたことわざ研究者の時田昌瑞さんも、語源ははっきりしないものの、少なくとも江戸時代の浄瑠璃までさかのぼれると説明しています。
同じ取材では、忙しい人のそばでのんびりしている猫の姿が、言葉の発想につながったのではないかという見方も紹介されています。これは語源についての一つの考え方です。
「猫の手も借りたい」の自然な使い方と例文
忙しく、手伝いがほしいときに「猫の手も借りたいほど忙しい」「猫の手も借りたい状態だ」などの形で使います。
- 年末の大掃除:「片付ける場所が多すぎて、猫の手も借りたいほどだ」
- お店の忙しい時間:「お昼どきはお客さんが次々に来て、猫の手も借りたい忙しさだ」
- 行事の準備:「お祭りの前日は準備することが山積みで、猫の手も借りたかった」
- 仕事の締め切り:「注文が重なり、今日は猫の手も借りたい状態です」
「猫の手も借りたい」という言い方は、実際に猫に何かを頼むのではなく、自分たちの忙しさを相手に伝える表現です。
「てんてこ舞い」「手が足りない」との違い
「猫の手も借りたい」に近い言葉にも、少しずつ違う特徴があります。
- 猫の手も借りたい:忙しくて人手が足りず、誰かの助けがほしい。
- てんてこ舞い:忙しさのため、あわただしく動き回っている。
- 手が足りない:必要な仕事に対して、働く人の数が足りない。
例えば「お店がてんてこ舞いだ」なら、店内があわただしい様子が伝わります。「お店は猫の手も借りたい状態だ」なら、忙しくて手伝ってくれる人を求めている気持ちが強く伝わります。
忙しさの様子を表したいのか、人手の足りなさを伝えたいのかによって使い分けられます。
誰かに手伝いを頼むときの注意
このことわざには、「どんな手伝いでもいいからほしい」という意味が含まれています。そのため、お願いする相手に向かって「猫の手も借りたいので、あなたに頼みます」と言うと、相手を「誰でもいい人」のように扱った印象を与えることがあります。
忙しさを説明するために「今は猫の手も借りたいほどです」と話すことと、相手を猫の手にたとえて直接お願いすることは分けて考えるとよいでしょう。
実際に協力をお願いするときは、「準備の人手が足りないので、少し手伝っていただけますか」のように、理由とお願いしたいことをそのまま伝えると丁寧です。