「白羽の矢が立つ」の意味は?由来と使い方

言葉・日本語
ソボチエ編集部

「白羽の矢が立つ(しらはのやがたつ)」は、多くの人や候補の中から、ある人やものが特に選び出されることを表す言葉です。例えば、重要な仕事の責任者に選ばれたときなどに使います。

現在は名誉ある役目への抜擢によく使われますが、もともとは犠牲になる人が選ばれることを表した言葉です。由来を知ると、よい場面にも困った場面にも使える理由が分かります。

「白羽の矢が立つ」は多くの中から選ばれること

小学館の『デジタル大辞泉』は、「白羽の矢が立つ」を、多くの中から犠牲者として選び出されること、また一般に多くの中から特に選び出されることと説明しています。『精選版 日本国語大辞典』にも、犠牲者として選ばれる意味と、特に指名される意味の両方が載っています。

例えば、いくつもの候補の中から、新しい店の責任者にある人が選ばれたとします。そのとき「新店舗の責任者として、田中さんに白羽の矢が立った」と言えます。

ポイントは、大勢の中から、その人が特に選び出されたということです。「田中さんが責任者になりたいと希望した」という意味ではなく、周囲がその人を候補として選んだことに重点があります。

人だけでなく、候補になった場所や施設にも使えます。例えば「イベントの会場として、駅前のホールに白羽の矢が立った」という言い方もできます。

由来は人身御供を選ぶという言い伝え

「白羽の矢」の「白羽」は、矢の後ろに付ける白い羽根のことです。この言葉の由来として伝えられているのが、「人身御供(ひとみごくう)」にまつわる話です。

人身御供とは、神に人を供え物としてささげること、またその人を指す言葉です。言い伝えでは、神が望む少女の家の屋根に、しるしとして白い羽根の付いた矢が立てられたといいます。

その家の少女は、望むかどうかにかかわらず、ほかの人々の中から犠牲になる者として選ばれます。ここから、「白羽の矢が立つ」が多くの人の中から特に選び出されることを表すようになった、と説明されています。

『デジタル大辞泉』や日本漢字能力検定協会の「漢字ペディア」は、この由来を「俗説」「俗信」として紹介しています。昔の日本で、実際にどこでもそのように人を選んでいたと確認された話ではなく、言葉の背景にある言い伝えとして理解しましょう。

現在はよい意味でも、望まない役目にも使える

もともとは犠牲者として選ばれる意味でしたが、現在の「白羽の矢が立つ」は、名誉ある役目に選ばれた場合にも普通に使われます。

集英社の『会話で使えることわざ辞典』にも、よい場合と悪い場合のどちらにも使う言葉だと説明されています。

  • よい意味:「新しいプロジェクトのリーダーとして、経験豊富な先輩に白羽の矢が立った」
  • 困った場面:「誰も引き受けたがらない難しい係に、私が選ばれて白羽の矢が立った」
  • 場所の選定:「数ある候補地の中から、式典の会場として市民会館に白羽の矢が立った」

毎日新聞の校閲センターによる解説でも、現在は特に選抜される意味での使い方が中心であることが紹介されています。選ばれることがうれしいか、負担になるかは、その場面によって違います。

また、「白羽の矢が立った」と言っても、必ず本人が引き受けたとは限りません。候補に挙がったのか、正式に役目が決まったのかは、前後の文章を見て判断する必要があります。

「白羽の矢を立てる」との使い分け

「白羽の矢が立つ」は、選ばれる側から見た表現です。一方、選ぶ側を主語にするときは「白羽の矢を立てる」という言い方ができます。

  • 白羽の矢が立つ:「次の代表として、佐藤さんに白羽の矢が立った」
  • 白羽の矢を立てる:「委員会は、次の代表として佐藤さんに白羽の矢を立てた」

どちらも、複数の候補の中から特定の人を選ぶという場面に使えます。文章の主語を考えると、自然に使い分けられます。

「白羽の矢が当たる」は正しい言い方?

「白羽の矢が当たる」と言いたくなるかもしれませんが、辞書などで本来の言い方とされるのは「白羽の矢が立つ」です。屋根に矢が立つという由来を思い浮かべると覚えやすくなります。

文化庁が2018年3月に実施した平成29年度「国語に関する世論調査」では、「多くの中から、選び出されること」について、どちらの言い方を使うか尋ねています。

  • 「白羽の矢が立つ」を使う:75.5%
  • 「白羽の矢が当たる」を使う:15.1%
  • 両方とも使う:0.7%

これは言い方についての調査であり、「よい意味と悪い意味のどちらで使うか」を尋ねた結果ではありません。伝わりやすい文章では「白羽の矢が立つ」を使うとよいでしょう。

意味をはっきり伝える言い換え

「白羽の矢が立つ」には、特に選ばれたという印象があります。相手に状況を正確に伝えたいときは、次のように言い換えることもできます。

  • よい役目に選ばれたなら「抜擢された」「責任者に選ばれた」
  • 複数の候補から選ばれたなら「指名された」「候補に選ばれた」
  • 望まない役目なら「難しい役目を任されることになった」

「白羽の矢が立つ」は、昔の言い伝えでは犠牲者を選ぶことを表し、今では広く「特に選び出される」意味で使われます。よい役目にも負担の大きい役目にも使える言葉だと知っておくと、場面に合った表現ができます。

参考資料