「いただきます」はいつから言うようになった?意味と由来
食事の前の「いただきます」は、正確に「この年から始まった」と言い切れる言葉ではありません。国立国会図書館のレファレンス調査でも、食前のあいさつとしていつから使われたかを詳しく示す資料は見つからなかったとされています。一方、「いただく」を「食べる・飲む」のへりくだった言い方として使う例は、室町時代末から近世初めごろには確認できます。現在のように食事前の決まり文句として広く使われる形は、近代以降に家庭や学校を通して広がっていったとみるのが慎重です。
食前の「いただきます」が始まった年は特定できない
国立国会図書館のレファレンス協同データベースには、「いただきます」の語源と、いつごろから使われたかを調べた事例があります。そこで紹介された複数の語源辞典や国語辞典から語の成り立ちは確認できたものの、「食事前のあいさつとして、いつの時代から使われたのか」について詳しく書かれた資料は見つけられなかったとまとめられています。
そのため、「いただきますは○年に始まった」「昔の日本人は全員が同じように言っていた」と断定するのは避けたほうがよいでしょう。
「いただく」を飲食の意味で使う歴史は古い
「いただく」は、もともと物を頭の上に載せるという意味の言葉です。身分の高い人から物を受け取るとき、頭の上に捧げ持つような動作をしたことから、「もらう」をへりくだって言う表現になり、さらに「食べる・飲む」の謙譲表現へ広がったとされています。
国立国会図書館の調査で参照された『日本国語大辞典』では、「食う・飲む」の謙譲語としての「いただく」に、室町時代末から近世初めごろの用例が挙げられています。つまり、「いただく」を飲食の意味で使うこと自体は、現在の食前のあいさつよりずっと古い歴史を持っています。
現在のような決まり文句は、家庭によって広まり方が違った
国立民族学博物館の『食卓生活史の調査と分析』では、明治以降の家庭の食事について聞き取り調査を行っています。その中には、子どものころは食事のあいさつがなかったと振り返る人や、「いただきます」は学校へ行くようになってから言うようになったと語る人もいました。
また、箱膳のころには決まったあいさつがなく、ちゃぶ台を使うようになってから言うようになったという回想も記録されています。こうした証言からは、「いただきます」が全国の家庭で昔から同じように使われていたわけではなく、地域や家庭によって差があり、近代の生活や教育の変化の中で広がっていった様子がうかがえます。
現在の「いただきます」には感謝の意味が込められている
農林水産省の食文化学習資料では、「いただきます」は「食べる」「もらう」の謙譲語である「いただく」から派生した、感謝の気持ちが込められた言葉と説明しています。
感謝の対象として、食材となったいのちや自然だけでなく、食べ物を育てる労働、料理や食文化の知恵、周りの人なども挙げられています。現在の食育では、「食べ物そのもの」と「食卓に届くまでに関わった人や自然」への感謝を表す言葉として教えられています。
「命をいただきます」だけが昔からの語源とは限らない
「いただきます」は「食材の命をいただく」という意味だと説明されることがあります。今の食育では、いのちへの感謝は大切な意味の一つとして扱われています。
ただし、言葉の歴史をたどると、「いただく」はまず「頭の上に載せる」「目上の人から受け取る」「飲食することをへりくだって言う」という流れで意味が広がってきました。国立国会図書館のレファレンス調査でも、「命をいただく」という説明だけを語源として裏付ける資料は示されていません。
そのため、由来と現在込められている意味は分けて考えると分かりやすくなります。
まとめ
「いただきます」の正確な始まりの年は特定できません。「いただく」を飲食の謙譲語として使う歴史は中世末までさかのぼりますが、食事前の決まり文句としては家庭差があり、現在のように広く使われる形は近代以降に広がっていったと考えるのが慎重です。現在は、食材や自然、料理に関わった人々への感謝を表す食事のあいさつとして定着しています。